研究の進め方
研究テーマ
思いつきではテーマになりません.最新の研究情勢や社会からの必要性を入念に調べ,研究テーマを選びます.つまり,周辺状況を丹念に理解することから始めます.次のことはきわめて重要です
- なぜ,その研究を実施する必要があるのか
- 既存の研究との関連はどうか(参考文献の整理,研究の位置づけ)
- 何を成果としてアピールするか.何がオリジナリティで売りか.何が新しいのか
- 成果がどのように役に立つか
- 後悔しないか
可能ならば,関連研究会に出かけ議論されているトピックスを調べるのも良い方法です.
また,よく知っている人に聞く(どこにどのような役に立つ情報があって,どのように利用できるかいつも準備しておくのは研究というより人生の基本)のも良いですよね.
最後に研究内容をよく説明できるようにいつも心がけることは極めて重要です.
研究の進め方
研究を進めていくと,熱心にすればするほど,今していること,困っていることに視野が狭まりがちです.卒業研究や修士研究では難しいとは思いますが,研究ゴールを想定して,今の自分の進捗状況はいかほどなのかが分かれば効率的に作業ができます.一枚の紙に,研究のフレームができて,うまく説明できれば効率的です.
研究ノートの記録は十分にしましょう.将来,もし特許とか知財(知的財産権)に関わる仕事をするととになったら必須の作業です.今やっている研究も知財に関わる仕事ですから,記録は偽りなくつけましょう.成果の整理に実によく役にたちます.ところで,大学で配布する知財ノートは雑記帳ではありません.大事に使ってください.
論文の書き方
論文を書くときに,自由に書いて良いわけではありません.そこが,エッセイや小説とは違うところで,学術論文として必ず守るべき書き方があります.論文だから,論点を整理し,根拠を駆使し,自分の考えを広く伝える事が目的です.したがって,叙情的な表現は不適当で,研究の発想を確たるものにする参考論文,客観的な資料,根拠に基づく説明は必須です.
論文とは何か
辞書では以下の様にあります
ろんぶん【論文】
1 ある事柄について,筋道を立てて意見を述べた文章.
用例・作例
―形式の試験
2 その人の研究の結果をまとめた文章.
用例・作例
卒業―・博士―
Shin Meikai Kokugo Dictionary, 5th edition (C) Sanseido Co., Ltd. 1972,1974,1981,1989,1997
要は「筋道を立てて研究成果を纏めること」であり,「成果を他の人に説明して納得してもらえるもの」である必要があります.論文の構成は「起・承・転・結」あるいは「序・破・急」に纏めるとわかりやすいといわれているのも,ここに理由があります.つまり,「適当にやったことを適当にまとめても論文とはならない.」ということです.
自分のオリジナリティは何か
論文では自分の考え方,見方を論じることになります.ここで重要なのは「自分の仕事のオリジナリティは何か」ということです.オリジナリティとは「独創性があること,自分の創意があること」であり,わかり亜yすいと思われがちですが,独りよがりの独創性は暴走に他なりません.そこで大事なのは,「既往の研究との位置づけ」であり,これがない論文は「ねごと」の域をでないことは明らかです.それでは,いかに既往の研究との位置づけを示すかですが,これは「公平な見方での既往研究の調査,言及」に他ならず,論文の位置づけを示すためには既往研究を参照し,論ずることは必須です.このときには参考論文として明確に示すことが必要です.よほどの天才的な研究成果がない限り,参考論文がない論文は論文とは認められません.参考論文の論文中の書き方は特に決まりはありませんが,著者,論文名,出版の所在,参考箇所のページ,出版年月日は最低限必要で,具体的な書き方は,土木学会に敬意を払って土木学会論文集の書き方(投稿の手引き)を倣うといいでしょう.
6.7 参考文献
a) 参考にした文献は引用順に番号をつけて本文末にまとめて記載し,本文中にはその番号を右肩上に示して文末の文献と対応させること.
b) 参考文献の書き方は,著者名,論文名,雑誌名(書名),巻号,ページ,発行年月日の順に記入のこと.発行の月日は省略して構わない.英文の雑誌の場合は,姓,イニシャルとする.著者数が多くとも,参考文献リストには全ての著者名を記載すること.ただし,本文中で引用する場合には, 3名以上の場合に限り,第一著者のみを書き,あとを“ほか”もしくは“et al”として省略してかまわない.
単行本の場合は,著者名,書名,ページ,発行所,発行年とします.英文の単行本の場合は書名は各単語とも頭文字は大文字とする.雑誌名,書名はイタリック体にすること.詳細については記入例を参考にすること.
【参考文献の記入例】
1) 本間仁, 安芸皓一 : 物部水理学, pp. 430-463, 岩波書店, 1962.
2) Miles, J. W. : On the generation of surface waves by shear flows, J. Fluid Mech., Vol. 3, Pt. 2, pp. 185-204, Aug. 1957.
3) Koening, H. W. : Energiumwand-lungsanlagen der Biggetalsperre, Wasserwirtschaft, Heft 1, S. 25-28, Jan., 1967.
4) Miche, M. : Amortissement des houles dans le do-maine de l'eau peu profonde, La Houile Blanche, No. 5, pp. 726-745, Now., 1956.
5) Gresho, P. M., Chan, S. T., Lee, R. L. and Upson, C. D. : A modified finite element method for solving the time-dependent incompressible Navier-Stokes equations, part 1, Int. J. Numer. Meth. Fluids, Vol. 4, pp. 557-598, 1984.
6) 國分正胤, 岡村甫 : 高強度異形鉄筋を用いた鉄筋コンクリートばりの疲労に関する基礎研究, 土木学会論文集,122, pp. 29-42, 1965年10月.
7) Shepard, F. P. and Inman, D. L. : Nearshore water circulation related to bottom topogrphy and wave refraction, Trans. AGU., Vol. 31, No. 2, 1950.
8) C. R. ワイリー(富久泰明訳) : 工学数学(上), pp. 123-140, ブレイン図書, 1973.
章の組み立て
論点を書き起こす章として,第1章がある.論文の背景,問題の位置づけ,論文の構成と意味づけをまとめます.ここで論点をして纏めた項目は,当然のことながら結論と対応している必要がある.
論文の構成イメージとしては,よく言われる序破急や起承転結の纏め方がわかりやすい.
結びとしての結論章では,第1章で説き起こした論点に対する結論を対応させて結びます.
中間にある各章では,説き起こした論点を結論づけるため,論理を展開するための研究成果を展開することとなります.
図表の配置
図表は論の展開を助けるためであって,その目的に沿って描かれなければいけないし,論を展開する上で無くてもいい図表は,是非載せたければ巻末に補遺として載せる程度で十分です.一つの図面ですべてを済ませようなんてことは不心得です.
研究内容の公開
論文ですから,成果は世に問うべきです.特に国立大学で国民の税金を沢山使ってした研究の成果を世に問うのは諸君の義務です.卒業式が目の前になって,限られた学生生活を違った文化に触れ「卒業旅行」で過ごしたい気持ちは理解できるけれども,貴君の大きな勢力を注ぎ込んだ成果を学会に残すことだって「大切な青春時代を生きた大きな証」と思いませんか?次のような公表機会が目の前にあります.
口頭発表はお手軽だけど,十分ではない
- 土木学会年次学術講演会,締め切りは3月末から4月初め
- 風工学会研究発表会 公募論文は隔年
- 鋼構造協会年次発表会
査読付き論文集,シンポジウムへの投稿
- 土木学会論文集,随時
- 構造工学論文集,締め切りは9月
- 風工学シンポジウム,隔年で締め切りは6月頃かな
- 風工学論文集,随時
- 応用力学シンポジウム
- 鋼構造協会論文集
英文で査読付き論文集,シンポジウムへの投稿
- ASCE論文集,随時
- IABSE会誌,随時
- Journal of Wind Engineering and Industrial Aerodynamics,随時
- WCEE, IIW, EASEC, WCSCM...
- ICWE, APCWE, BBAA, CWE...