地球温暖化(海面水温上昇)が台風強度特性に及ぼす影響

 

地球温暖化と台風強度

大気中の二酸化炭素濃度の上昇によって地球上の気温,海面水温の上昇等が予測されています.予測シナリオにもよりますが,今後100年間で,最大3Cの海面水温の上昇が見込まれています(図−1参照).

ところで,台風は北緯1020°程度の海面水温が概ね27°以上の海域で多く発生することが過去の統計から明らかとなっています.また,発生後の台風の盛衰には台風進路にあたる海面水温が大きな影響を及ぼすといわれており,このことから地球温暖化に伴って将来の海面水温が上昇すると,日本に来襲する台風の頻度や強度が影響を受けることが予想されます.また,このことは構造物の耐風設計にも影響することが予想されることから,地球温暖化に伴う海面水温の上昇が台風頻度,強度に及ぼす影響を定量的に明らかとすることが求められます.

 

図−1 地球温暖化予測情報(気象庁,1998

 

台風シミュレーション

過去の台風の統計データを基に,台風の発生数,強度,移動速度などに関する確率モデルを構築し,モンテカルロシミュレーションによって長期間(数千年以上)にわたる台風のシミュレーションを行うことができます.シミュレーションによって,台風中心の気圧場,移動速度などが求められると,台風構造のモデルを使うことで,任意の地点での風速を算出することが出来ます.この作業を繰り返すことで,任意の地点での風速頻度(風速の極値分布)を求めることができ,構造物設計の際の設計風速設定の基礎資料とすることができます.

設計風速の決め方には,過去の風速統計データからの極値分布解析,周辺地形特性と風との相関解析による地形因子分析などがありますが,いずれも限られた期間での統計データからの推定となるため,年最大風速のような極値を扱う場合には限界がありました.台風シミュレーションでは,数千年以上といったかなり長期間でのシミュレーションが可能であるため,極値の推定を安定して行えるという利点があります.

ここでは,この台風シミュレーション手法を用い,新たに海面水温の影響を取り込むことで,将来の海面水温の変化が台風頻度,強度にどのような影響を及ぼすかを検討しました.

 

台風シミュレーションの実施

1)台風発生段階

まず,どこ(位置)でどれぐらい(頻度)台風が発生するかを乱数によって決めます.過去50年間の平均では,平均26.9個,標準偏差4.83個です.図−2に台風の発生頻度数を示します.また,発生させた台風に初期値(中心気圧低下量,移動速度)を乱数によって与えます.

2)台風移動段階

現在利用できる台風データは,6時間毎に整理されています.したがって,シミュレーションにおいても6時間前後での中心気圧低下量と移動速度の関係を線形式で与えます.

ここでは海面水温が線形的に影響を及ぼすと考え,現在値Xpresentに海面水温Yの効果を線形的に加えることとしています.eは誤差です.

3)強風予測

強風を予測する地点(例えば,横浜)に接近した台風に着目し,中心気圧低下量,移動速度,台風までの距離から,上空風速が求められます.上空風速を地上風速に変換するためには,経験則によるか,地形模型風洞実験,数値解析等を行うことになります.

 

 (台風内の気圧分布)

 (台風内の風速分布)

4)極値解析

対象とする地点での台風毎の最大風速を算出し,各年毎での年最大風速を求めます.1)〜3)のステップを必要とする年数分だけ繰り返すことで(図−3参照),年最大風速の極値分布を求めることができ,それから例えば,100年再現期待風速等が求められます.

 

図−2 台風発生頻度数(過去50年の累計)

 

図−3 6時間前後でのパラメターの線形回帰

 

図−4 台風シミュレーションのフロー

 

図−5 台風シミュレーションによる大型台風の軌跡

(海面水温として過去30年平均値を用いた)

図−6 台風シミュレーションによる大型台風の軌跡

(海面水温として80年後の値を用いた)

 

図−7 海面水温上昇に伴う各地の100年再現期待風速の上昇率(80年後/現在)