目      次

 

1.橋梁の耐風設計と風洞試験

 1.1 橋梁の対風応答

 1.2 風荷重

 1.3 渦励振

 1.4 ギャロッピング

 1.5 ねじれフラッター

 1.6 曲げねじれフラッター

 1.7 ガスト応答

 1.8 レインバイブレーション

 1.9 ウェイクギャロッピング

 1.10 風洞試験の種類

 1.11 風洞試験の相似則

 1.12 静的空気力測定試験(三分力試験)

 1.13 動的耐風設計に関する風洞試験方法

   1.13.1 橋げたの風洞試験

   1.13.2 塔の風洞試験

 

 

 

1.橋梁の耐風設計と風洞試験

 

 橋梁の耐風設計は,対象となる橋梁構造が自然風にさらされた時にどのような挙動を示すのかを確認し,それが設計で想定している許容値以内かどうかを判定することが求められる.そして,もし許容値を上回ることが想定されるならば,構造の形状を変更したり,何らかの安定化対策を施すことで,許容値以内に収めることも耐風設計の重要な要件の一つとなる.

 橋梁の耐風設計を実施するためには,橋梁に作用する空気力あるいは風による振動を精度よく推定する必要がある.しかしながら,これらを解析的に求めることは,橋梁の断面形状が複雑でしかも多様であることなどの理由により非常に困難であり,現時点においては風洞試験が最も有効な手段である.

 

1.1 橋梁の対風応答

 ここでは,風によって橋梁に励起される空力弾性現象(対風応答)について述べる.

 橋梁が風を受けると,まず抗力の作用によって風下側に変形(静的変形 Static deflection)が生じる.静的変形は,風下のみならず,揚力,空力モーメントの作用によって,少しではあるが鉛直方向の変位やねじれ変位も伴う.また,抗力,揚力,空力モーメントを総称して風荷重という.

 風の流れの中に構造物がおかれると,その背後にカルマン渦列が形成され,渦の発生振動数と構造物の固有振動数とが一致する風速で,風の流れとは直角方向に振動する渦励振Vortex oscillation)が発生することがある.渦励振は,長大橋の桁,ケーブル,主塔などで観測されることがあるが,発生風速域が限られ,振動振幅も比較的小さいことが多い.また,発生する風速域が限られること,振動振幅も発散的でないことから,限定振動Limited vibration)と呼ばれることもある.

 風速が高くなり,設計風速域に近づくにつれて,構造物固有の特性によって,ギャロッピングGalloping)やフラッターFlutter)と呼ばれる不安定振動が発生しやすくなる.ギャロッピングとは,揚力係数勾配が負の時に,振動に伴う相対迎角と励振力とが閉回路を構成し,振動が発散的に成長することに起因するもので,ケーブルや比較的桁高の大きい箱桁などに発生しやすいたわみを主体とする振動である.一方,フラッターは,構造物の振動に伴う空気力が励振力として作用し,構造物固有の減衰を励振力が上回った時に,発散的に振動が成長するものである.フラッターには,振動の特性に応じて,ねじれ振動が卓越するねじれフラッターTorsional flutter),曲げとねじれ振動が連成する曲げねじれフラッターBending-torsion flutter)あるいは連成フラッターCoupled flutter)がある.

 自然風中では,時間とともに風速が変動する乱れ成分があるが,この風速変動の作用によっても構造物が強制振動させられる.これをバフェティングBuffeting)あるいはガスト応答Gust response)という.バフェティングは,風速と乱れの強さに比例し,風速変動のエネルギーを入力とする強制振動として扱われている.

 吊橋や斜張橋の桁のように細長比の大きいスレンダーな構造物が風荷重を受けると,主流方向のたわみに加えて,ある風速(風荷重)で直交する方向に突然たわみ(座屈)を生じることがある.また,ある風速以上になると,桁がいわゆるあおられるような状態となって,ねじれ変位が急激に増大する現象が生じる.前者を横座屈Lateral buckling),後者をダイバージェンスDivergence)と呼んでいる.いずれも静的な不安定現象として捉えられている.

 さらに,斜張橋のケーブルによく見られる空力振動現象として,渦励振,並列ケーブルで発生するウェイクギャロッピングWake galloping),雨によるケーブル表面の水路形成に起因するレインバイブレーションRain-wind-induced vibration)などがある.

 本州四国連絡橋の耐風設計においては,設計の便宜を考えて,図1.1に示すように空力弾性現象を分類している.

 

図1.1  本州四国連絡橋耐風設計における空力弾性現象の分類[1]

 

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1.2 風荷重

 風により橋梁に働く力,風力は,図1.2に示すように抗力,揚力,空力モーメントに便宜的に区分される.実際はこれら3種類の力が作用しているわけではなくて,物体の各部分に働く力の合力を理解しやすいように3つに分解した結果であり,このことから3分力空気力とも言われる.

 

図1.2  風力の定義[2]

 

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1.3 渦励振

 例えば,川に杭が立っているとき,杭の後ろ,後流に対になっている渦が幾つも流れているが,これをカルマン渦と言う.カルマン渦は,川の中の杭の後流だけに発生するわけではなくて,物があればその後流に発生する.例えば,天気に関するニュースで冬の季節風が強い日に済州島の後流にカルマン渦がよくみられる.カルマン渦の渦対の発生は,物が決まれば固有の周期となる.実際は,渦対の発生する振動数fsは,風速に比例する形で代表長〔普通は物体の見つけ幅(高さ)D〕を使って,

                      (1)

のように示され,比例定数Stはストローハル数と呼ばれる.橋梁の風による振動は,長方形断面の物体の振動を基本に考えるが,長方形断面の物体のストローハル数は,図1.3のようになる.流れの中の物体から1つの渦が発生したとき,その反力が流れ直角方向に物体に作用するというのは,クッタ・ジューコフスキーの定理が教えるところである(図1.4).したがって,対になっている渦が続いて流れ出ると,先のストローハル数で決まる振動数で渦反力が上に下に順番に働くこととなる.振動する物体が流れの中に置かれると,振動の固有振動数と渦発生の固有振動数が一致すると共振し,大きな振動が発生すると考えたのが,渦励振の考え方の始まりである.先の関係式を変形すると,渦の発生と共振する風速は換算風速で,

                          (2)

となる.

 ところが,橋桁や長方形断面柱のごく周辺の流れの状況を調べた最近の研究成果によると,少し,状況が異なっていることがわかっている.ごく簡単に説明すると,図1.3に示すストローハル数を長方形断面の断面比B/Dで小さい方からたどって見ると,2個所で飛び移りがあることがわかる.この飛び移りが,物体周辺の流れの性格が変化する境と考えられている.つまり,図で考えている長方形断面の物体は,いわゆる流線型ではないため,風上から来る流れの流線は物体の風上の端で“剥がれ”ることになる(図1.5).実は,この剥がれた後,その流れがどうなるかが問題となる.図1.3でB/Dが小さ

図1.3  長方形断面の物体のストローハル数StB/Dの関係[2]

 

図1.4  渦発生に伴う反力[2]

 

い範囲では,いったん剥がれた流れはそのまま物体に大きくは影響されず後流に達すると考えられており,完全に剥がれ離れるという意味で,完全剥離型の物体と呼ばれている(図1.6).図1.3の左の図でB/D2から3の間で2つの線がみられるが,(曖昧ではあるが)その辺りが境界と考えられている.これよりB/Dが大きくなり長くなると,風上で剥がれた流れが物体に再び近づきぶつかるようになり,再び流れが物体に付くという意味で,完全剥離型に対して再付着型の物体と呼ばれている(図1.6).

 B/Dがさらに大きいところにもう一つストローハル数の飛び移りがあるが,これは完全剥離型の流れと再付着型の流れはずいぶん状況が違うため,一つの流れのパターンから次の流れのパターンへ突然変わるわけにはいかず,ストローハル数の飛び移りが

図1.5  剥離する流れ[2]

 

図1.6  完全剥離型と再付着型の周辺流れ[2]

 

起こる2つのB/Dの間で完全に完全剥離型から,完全剥離型が少し混ざった再付着型,常に再付着が起きる再付着型へ移る状況だと考えられている.

 この流れの状況と渦励振の発生は大きく関係しており,前半で説明した後流の渦の発生による反力が起こす振動という意味での渦励振は,完全剥離型の物体で発生するものと考えていいようである.よく説明に出てくる円柱は,ごく近い周辺の流れからすれば完全剥離型であるから,カルマン渦と渦励振を結び付けた説明は当然と言える.一方,再付着型の流れでは,再付着する流れに,物体の影響,特に振動している場合には物体の運動の影響が大きく現れる.物体の風上側の端から剥がれた流れが物体に再付着する状況を剥離バブルと言うが(図1.7),これが振動によって大きくなったり,壊れて渦になって後流に流れていくことになる.再付着型の物体のうち,B/Dが小さいうちは剥離バブルの動きが支配的である一方,B/Dが大きくなると渦が後流に流れ去る状況が渦励振の発生に大きく影響することがわかってきた.このような渦励振の場合,後流にあるカルマン渦を壊しても振動発生に影響は少なく,完全剥離型の物体の渦励振とは性格が異なるが,橋桁の渦励振は,ほとんどがこれにあたる.

 ところで,渦励振を抑制するための対策は,説明した発生の状況と密接に関係し,完全剥離型の渦励振では渦の規則的な発生を防ぐため,例えば円柱なら帯状の螺旋状に巻き付けることが効果があるし,再付着型の橋桁なら,桁の耳桁部の形状を変更して,三角形状にしてフェアリングにしたり,板状の物を突き出してフラップにしたりすることが制振対策手段となっている.

 さて,渦励振の発生する状況にいろいろあることを説明したが,これら渦励振が発生する風速は先の共振風速を考えるとほぼ近い値が得られるようである.図1.8は渦励振の発生風速に関する研究成果で,図中の渦励振のVr = 1.67B/Dは,先の共振風速をVr = 1/Stと書いた式と組み合わせてストローハル数を逆算すると,図1.3の対応するB/Dの物体のストローハル数と大まかには一致する.

 

  図1.7  再付着と剥離バブル[2]     図1.8  渦励振の始まる風速とB/D

                                     の関係[2]

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1.4 ギャロッピング

 ギャロッピングは流れと直角の方向に大きな振動が発生する発散振動である.過去の研究成果によると,ギャロッピングは,完全剥離型の物体で発生するようである.完全剥離型といっても,大まかにはB/Dで1より小さい0.7程度から2.5ないし3より少し小さいところまでの物体である.流れの再付着の影響が大きくなると,ギャロッピングは発生しなくなる.完全剥離型の流れは図1.6に示すようなもので,図中の物体が例えば上の方へ動き出すことを想定すると,完全剥離型であるからいったん物体の上流の端から剥がれた流れは,物体から離れて後流へ流れていくはずなので,物体の上側では剥がれた流れに近く,下側では下側から剥がれた流れから遠くなる.このとき,流体力学的メカニズムを介し,物体上側ではより低圧になり,下側では逆になって,上方向に押し上げる力が作用することになる.物体が振動するとこれが繰り返され,振動を大きくする力になる.物体の振動の影響が,流れに少し遅れて現れることでギャロッピングの場合,振動を抑えるためには,周辺の流れを完全剥離型から再付着型へコントロールすればよく,流れを表面に沿うように制御する目的で箱桁下面に設けられるスカートやプレートはこのイメージで開発されたものである.

 ギャロッピングは,よく準定常理論で説明される.準定常の意味は,いわゆる準静的と同じで,非常にゆっくり運動している状態を考えて,発生する力を動いていないときの作用力特性で表現しようということと同じである.図1.9をで,風速Uの流れの中で,物体

図1.9  準定常理論の考え方[2]

 

が上方向に小さいで動いていると考える.視点を変えて,物体からみると自分は止まっていて,流れは下方向にで動いているように見えることになる.このとき流れは見掛け上の迎角が付いていることになる.静的に迎角が付いている場合は,図1.9にあるような方向で抗力と揚力が作用するので,鉛直方向にはL = PL cosα+PD sinαの力が作用することになる.抗力,揚力,sincos関数をテイラー展開して,a2次の項以降をaは小さいとして省略すると,a 0のときの力や力の勾配を用いて,

             (3)

となる.これを運動方程式に組み込むと,外力のの項は左辺側に移項して,減衰項となる.減衰項の係数(c - fI)が負のとき,振動は発生することから,結局,

                         (4)

が負のとき,空気力係数の定義からすると,抗力係数は常に正なので,概略的には揚力係数の勾配(ラディアンで示した揚力勾配),

                            (5)

が負のとき,ギャロッピングの可能性があることになる.

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1.5 ねじれフラッター

 ねじれフラッターは,ギャロッピングと異なり,再付着型の物体で生じる.再付着型の流れは,図1.7,1.8のようになり,ねじれ振動が起きると,振動に応じ剥離バブルが大きくなったり,砕けたりする.これは渦励振のときと同じであるが,ギャロッピングと同じように,再付着型の流れの振動に対する遅れがねじれフラッターの原因となる.したがって,物体側面上の流れをうまく制御すればよいことになり,側面上に衝立て状のバリアを設けたり,上下に貫通する風抜きが効果がある.

 

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1.6 曲げねじれフラッター

 曲げねじれフラッターは,元々飛行機の翼のねじれ振動事故が原因で検討が始まった現象である.曲げねじれフラッターとは,振動の発生に曲げが連成することが必須であることで,曲げ振動を拘束すると曲げねじれフラッターは発生しない.ねじれフラッターに対し,より偏平な物体で,高い風速で発生することが多く,通常の橋桁ではねじれフラッターを制御すると,次に現れる現象である.同じ翼で発生したねじれフラッターが失速フラッターと呼ばれ,剥離した周辺流れの発生が鍵であるのに対し,曲げねじれフラッターではそうではない.

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1.7 ガスト応答

 構造物に当たる風はいわゆる自然風で,風速は時間とともに変化している.それにより発生する振動がガスト応答であることは先に述べたとおりである.したがって,ガスト応答は物体形状の如何を問わず発生するが,偏平であればあるほど,揚力勾配,モーメント勾配が大きければ大きいほど,曲げやねじれのガスト応答は大きくなる傾向にある.この理由は,ガスト応答理論の詳細を説明しなければならないが,概略的に説明すると次のようになる.

 ガスト応答は,基になる風速変動が不規則で多くの周波数の成分を持つものとして扱われているために周波数領域の伝達関数の積の形で表現されている.まず,風速変動を変動する力に変換する伝達関数(空力アドミッタンス),次に風速の空間的な関係と構造物の振動の状況を併せた伝達関数(ジョイントモードアクセプタンス),そして変動する一般化外力を振動変位に変換する伝達関数(機械的アドミッタンス,周波数応答関数)の組合わせになる.ここで,(  )内は慣用の呼称.この中で空力アドミッタンスの無次元化に先ほどの空気力の勾配がかかわっていて,それが大きいほど力が大きいということになる.

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1.8 レインバイブレーション

 斜張橋のケーブルで経験された現象で,ポリエチレン管で被覆されたケーブルで雨天時に発生しやすいようである.ケーブル表面に降った雨が吹き流されて,ある特定の位置でケーブルに沿って流れる水路を作ることで発生するギャロッピングとして理解されている.したがって,水路の形成を妨げる方向で,レインバイブレーションを抑える対策も工夫されている.

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1.9 ウェイクギャロッピング

 多導体送電線や斜張橋のダブルケーブルで,風上にあるケーブルの後流に一方のケーブルが入ることで発生するギャロッピングで,複数段のケーブルを連結したり,ケーブルをまとめるように拘束することで対策が行われているようである.最近では,PC斜張橋を除き,並列ケーブルは用いられなくなっている.

 また,明石海峡大橋の並列ハンガーケーブルでも下流側ケーブルに大きな振動を生じたが,これはケーブル間隔が比較的広い場合に生じるウェイクインデューストフラッターと呼ばれるものであり,ヘリカルワイヤで制振対策が取られた.


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1.10 風洞試験の種類

 

(1)模型化方法の違いによる分類

 通常行われる橋げたの風洞試験の種類を,測定項目に対応させて表1.1に示す.橋げたの風洞試験のうち,従来から最も頻繁に行われてきた試験は断面の静的な空気力係数(抗力,揚力,空力モーメント係数:三分力係数と呼ばれる)を求めるための静的空気力測定試験と,対風応答を求めるためのバネ支持模型試験であり,これらについては試験方法の詳細な規定が「本州四国連絡橋風洞試験要領(1980)・同解説」[2.3]中に見られる.とくにバネ支持模型試験は,橋げたの代表的部分のみを部分的に取り出して剛体模型を制作し,これを適当なバネで支持して行う比較的簡便な方法であり,通常の大きさ(測定胴の幅12m)の風洞を用いても十分な精度で橋げた細部(トラスト部材,高欄等)を模型化することができるなど大きな利点があるので,今後とも,頻繁に用いられる方法であると思われる.しかしながら,本方法においては橋げたの全体的

 

表1.1  橋桁の代表的な風洞試験方法[4]

な挙動が対風応答に及ぼす効果が無視されており,また,乱流中の風洞試験を行う場合にも不都合があるため,実橋の対風応答を正確に求めるうえで最適な方法とは言いがたい面がある.このようなことから,最近では橋梁全対を弾性模型化して行う全橋模型試験,あるいはタウトストリップ模型試験(あるいは剛性棒模型試験)が行われる例が増えてきている.これらの方法によれば実橋の対風応答を(乱流の効果も含めて)ほぼ直接的に評価することができる.その反面,風洞の大きさに制限があるため模型が極度に小さくなってしまい,バネ支持模型試験の場合とは逆に細部の模型化が困難になるケースが少なくない.このような事情から,現時点においてはいずれの方法が対風応答を評価するうえで最適な方法であるとは一般に決めがたく,試験の目的に応じていずれかの方法,あるいは複数の方法をあわせ行って最終的な結論を得ることが望ましい.バネ支持模型試験,タウトストリップ模型試験,全橋模型試験の長所,短所を比較した表を表2.2に示す.また,塔の風洞試験法としては,剛体模型を弾性支持して行うものと塔全体を弾性模型化して試験を行うものとがあるが,最近は後者が多いようである.

 

表1.2  バネ支持模型試験,タウトストリップ模型試験,

                全橋模型試験の比較[4]

 

(2)風洞気流の違いによる分類

 表1.1に示した風洞試験法は各々,風洞内気流の性質の違いに着目して一様気流中の試験と乱流中の試験に大別される.従来,風洞試験には乱れのほとんどない一様気流が多く使用されてきた.この試験により,橋梁の基本的な空気力特性を明らかにすることができる.前述の「本州四国連絡橋風洞試験要領(1980)・同解説」も一様気流中の試験方法を規定したものである.一方,自然風は時間的にも空間的にも変動する乱流であり,最近の研究成果によれば,乱流中での構造物の振動特性は一様気流中でのそれと比べて異なる場合が少なくない.例えば,橋げたの発散振動および渦励振に関しては一様気流中での試験結果は過剰に安全側の推定となることが多い.このため,風洞試験では自然風の乱れの影響を考慮に入れることが望ましい.

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1.11 風洞試験の相似則

 

(1)一様気流中での風洞試験

 橋梁の風洞試験を行う場合,実橋と模型の両者の物理的現象が共通となるよう,流れの相似性および橋梁の動的挙動の相似性を確保する必要がある.これらの相似条件を求めるためには次元解析が有効であるが,一般には基礎方程式(ナビエ・ストークスの運動方程式,橋梁の運動方程式)から導く方法が用いられている.詳細は省略するが,一様気流中で橋梁の風洞試験を行う場合,実橋と模型との間で合わすべきパラメーターは,幾何学的形状のほか次に示す5つの無次元パラメーターとなる.

 (T)慣性パラメーター(密度比)         ρs /ρ

 (U)弾性パラメーター(コーシー数の逆数)  E / (ρU2)

 (V)重力パラメーター(フルード数)         gD /U2

 (W)粘性パラメーター(レイノルズ数)       UD /ν

 (X)構造減衰(ここでは対数減衰率)     δs

ここに,ρ,ρsはそれぞれ空気,材料の密度,Eは材料の弾性係数,Uは平均風速,νは空気の動粘性係数,Dは総高(総幅Bなど,他の代表寸法を用いてもよい)である.

 (T)の慣性パラメーターは,Ipをそれぞれ構造物の単位長さあたり質量,極慣性モーメントとして,

                (6)

               (7)

と置き換えられることがある.

 (U)の弾性パラメーターは,構造物の固有振動数をf,断面2次モーメントをIとすると,f 〜〔EI/m1/2/D2の関係があることから,次のように置き換え可能である.

     (8)

したがって,(T)の慣性パラメーターが相似されている場合には,(U)の弾性パラメーターは無次元振動数fD/U(あるいは無次元U/(fD))で置換えられることになる.

 (V)の重力パラメーター(フルード数)は,吊橋の全橋模型試験において死荷重によるケーブル張力を相似させる必要のあるような場合等には一致させる必要がある.一方,けた橋の全橋模型試験,橋げたのバネ支持模型試験やタウトストリップ模型試験,塔の風洞試験等によってそれらの動的挙動を求めるような場合には,模型の復元力がそれらの弾性的性質のみによって定まり,重力が関与しないと考えられるので無視できる場合が多いが,ケーブルとの共振をも考慮に入れたいときには相似させる必要が生じる.

 (W)の粘性パラメーター(レイノルズ数)を一致させることは一般の風洞で構造物の模型試験を行う場合には不可能に近いが,橋の構成部材は角ばった断面であることが多く,流れの剥離点がレイノルズ数に依らず角点に固定されると考えられるため,通常この条件は無視する.ただし,例えば全橋模型試験においてケーブルに作用する抗力を相似させようとするような場合には,レイノルズ数の影響を考慮に入れて模型の設計を行う必要がある.

 (X)の構造減衰を相似させることは必ずしも容易でない.とくに吊橋や斜張橋の全橋模型試験を行う場合には,模型の構造減衰が所要値を大きく上回ることが多いので,模型細部(剛性棒と外形材の取付け部や沓の部分)の設計に細心の注意を払う必要がある.

 以上より,長さの縮尺率をDm/Dp = 1/n(添字のmpはそれぞれ模型,実物をさす)としたときの緒元の縮尺率は表2.3のように示される.

 

(2)乱流中での風洞試験

 乱流中で風洞試験を行う場合は,一様気流中での風洞試験の場合に合わすべき相似パラメーターに加えて,気流の乱れ特性に関する以下の無次元パラメーターを合わせる必要がある.

 (Y)乱れ強さ                              

 (Z)乱れのスケール                     など

 ([)パワースペクトル密度関数    を相似させる条件の下に)

 (\)風速の空間相関  

 (])平均風速の高さ方向変化     [指数関数など]

 ここにσu,σv,σwxyz方向の変動風速成分uvwの標準偏差,x方向の平均風速,LxuLyuLzuuxyz方向の乱れのスケールで,x方向を平均流方向,zを高さ方向にとる.Zrは適当な基準高度である.

 

表1.3  模型諸元の縮尺率[4]

 

 これらの無次元パラメーターを相似させるために,いくつかの試みがなされている.以下に主な方法を挙げる.

(a)乱流格子による方法

 縦横に組んだ粗い格子を風洞測定部の模型上流側に置いて乱流を生成するものであり,格子の配置を調整することにより乱れの特性を制御することができる.この方法は簡便ではあるが,一般的に大きな乱れのスケールを得ることが難しく,模型を極度に小さくしないかぎり乱れのスケールが所要値に対して小さくなり過ぎるなど,次に示す床面祖度による方法と比べて自然風に対する相似性を高めるのに困難が多いようである.また,乱流格子によって風速の高さ方向分布を相似させる場合には上流側で床面に平行した鉛直面内の棒の間隔を調整する方法が考えられるが,このときは気流の平均的な傾斜角を0°に保つように注意が必要である.なお,乱流格子と模型との距離が近すぎると,平均風速の橋軸方向の一様性が保たれなくなるので,十分な距離をおいて配置する必要がある.

(b)床面粗度による方法

 風洞床に粗度ブロック,人口芝などを置いて,乱流境界層を生成させるものである.この境界層内の風速の平均値の高さ方向分布と乱れの性質は床面祖度の大きさと,その配置させている長さなどによって定まるが,十分に厚い境界層を発達させるためにはかなりの長さ(2030m)の測定部をもつ風洞が必要となる.この方法は煩雑である反面,比較的大きな乱れのスケールをもつ乱流を生成できるなど,自然風に対する相似性はかなり高まるといわれている.なお,とくに厚い境界層を発達させたい場合,あるいは測定部の長さがあまり長くない風洞を用いる場合には,床面粗度と上流側の速度成層発生用部材(スパイア,渦生成板等)を併用することもある.

(c)その他

 上流側に設置した平行翼などを機械的に振動させて変動流を生じさせるなどの方法が一部実用化されている.

 以上,(a)(c)のいずれの方法によっても(Y)〜(])に示したすべての無次元パラメーターを同時に合わせることは非常に困難であり,実際には最も重要と考えられるパラメーターから順にできるだけ多くのパラメーターを合わせてゆくことになる.橋げたのような水平に横たわる構造物に対しては,(])の平均風速の高さ方向分布の相似はそれほど問題にする必要はなく,風速方向および鉛直方向の乱れ強さと風向方向の乱れのスケール,つまり(Y)のIuIw,(Z)のLxu/Dを相似させることが優先される.研究によればとくに気流の乱れ強さは対風応答にかなり大きな影響を及ぼすことが報告させており,最低限,主流方向乱れ強さIu(ただし,鉛直ガスト応答を対象とするような場合には鉛直方向乱れ強さIw)を合わせて試験を行うことが望ましい.

 一方,塔のように,鉛直方向に長い構造物に対しては,(])の平均風速の高さ方向分布を相似させることが最も需要となる.その他,(Y)のIuIv(Z)Lxu/Dを相似させて試験を行うことが望ましいが,中でも主流方向乱れIuおよびその鉛直方向分布を合わせることが重要である(表1.4参照).

 

表1.4  乱流の相似パラメータ[4]

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1.12 静的空気力測定試験(三分力試験)

 

 静的空気力の測定には天秤やロードセルタイプの検出器が用いられ,図1.10に示すように剛体模型(表1.1参照)をピアノ線や支持具で支持し,これに一様気流をあてて空気力の三成分の係数,すなわち抗力,揚力,および空気力モーメント係数が測定される.本試験は静的な試験であるので,幾何学的な形状の相似のみに留意すればよく,1.11(T)〜(X)に示した無次元パラメーターを合わせる必要はない.ただし,(W)の粘性パラメーター(レイノルズ数)を無視した影響を調べるため,例えば10m/s20m/sといった異なった2つの風速で同様の試験を行い,空気力係数が風速(レイノルズ数)によって変化しないことを確認することとしている.

 空気力係数の測定値は風の迎角,つまり,橋げたの風に対する姿勢によって大きく変化するので,多くの場合,迎角を−10°〜10°の範囲で変化させて測定を繰り返し,迎角と空気力係数との関係を示す曲線を求めて試験結果とする.この場合,図1.11に示すように,計測値は風軸方向の値であることに注意する必要があり,模型軸,つまり構造軸方向の空気力成分を求めるときには迎角に応じて測定値を換算する必要がある.また,測定には,吊線や端板などに作用する抗力が一緒に含まれてしまう影響や,風洞気流の境界(風洞の天井,床,両側壁)が有限であることに起因する閉塞効果などが現れるで,これらについても必要な場合には適当な補正を施さなければならない.通常形式の風洞天秤の精度は,静的には1/105程度であるが,気流中では振動などの影響で1けた落ちるのが普通である.

 

図1.10  静的空気力測定試験 模型支持方法[4]

 

図1.11  抗力の定義[4]

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1.13 動的耐風設計に関する風洞試験方法

 

1.13.1 橋げたの風洞試験

(1)バネ支持模型試験

 バネ支持模型試験においては,図1.12に示すように,剛体模型(表1.1参照)をバネで支持し,上下(たわみ),回転(ねじれ)の2自由度振動をおこなわせるようにし,これに通常一様気流をあてて振動応答を調査する.バネ支持模型試験においては,1.11でも述べたように相似則における重力パラメーターが無視でき,形状の相似のほか,次の3条件が満足されればよい.

 

図1.12  バネ支持模型試験方法の一例[4]

 

 

@    慣性パラメーター    

A    風速パラメーター    

B    構造減衰         

ここに添字θ,hはそれぞれ回転,上下運動に関する量であることを示す.また,質量,極慣性モーメントは等価質量,等価極慣性モーメントとする.なお,等価質量,等価極慣性モーメントの定義は,次に示すとおりとする.

 

[等価質量m,等価極慣性モーメントIp

         (9, 10)

ここで,j(s)はモード関数(sは構造座標),jh(s)およびjq(s)はモード関数のうち上下運動および回転運動に関する成分,dwは微少区間の質量を表す.すなわち,分子は構造全体で積分し,分母は桁部分のみで積分することとなる.

 風洞模型は,上記@の条件を満足するために軽くする必要があるが,模型の構成部材が振動や変形を起こさないよう十分剛でなければならない.上記Aの条件より,バネ支持模型試験の振動数が定まれば風速倍率(=実橋風速/風洞風速)が一意的に定まる.したがって,逆に,風速倍率が適当な値をとるように,バネ定数を選択し,振動数を定める.ただし,装置の関係上振動数比fq/fhが大きい場合にはこの条件を満足させにくい.また試験におけるモードが特定のもの(通常最低次)に限られるなどの制約もある.上記Bの条件は,支持装置の減衰が小さくなるように工夫したうえで減衰器を取り付け,構造減衰が所要の値に合うよう調整する.

 試験の手順(図1.13参照)は,風速を漸次上昇させ,各風速での模型の振動状況を記録し,風速と振動数,振幅,減衰率などの関連を調査して,振動発現風速その他耐風安定性の判断に必要な資料を整える,といった経過をたどる.これらの振動の測定には非接触型光学式変位計が使われることが多い.一様気流中のバネ支持模型試験については,静的空気力測定試験(三分力試験)と同様,「本州四国連絡橋風洞試験要領(1980)・同解説」に詳細な規定がある.

 バネ支持模型試験は橋げたの動的挙動を把握するうえで最も基本的な試験方法であり,比較的低コストで一様気流中における発散振動や渦励振の発生の可能性を照査できる.本試験に用いられる剛体模型は通常大きく模型化することが可能なため,細部の模型化が可能であり,断面形状の変更や制振対策部材が動的挙動に及ぼす影響・効果を検討するのに便利である.しかしながら,本方法では振動モード等の効果,(吊橋や斜張橋の場合)塔やケーブルの空力的影響などを検証できないので,厳密な予測を必要とする場合には試験データの解釈に十分な注意を払うことが必要である.

 なお,バネ支持模型試験は1.11(2)に示した乱流格子を用いて,乱流中で実施される場合がある.この場合,模型が大きくて,乱れのスケールが小さいために,1.11(2)の(Z)の乱れのスケールLxu/Dなどが実際と比べてかなり小さくなる場合が多いものの,(Y)の乱れ強さIuIwはほぼ合わせて試験を行うことが可能な場合もあり,得られたデータは乱流効果を評価するうえで参考にすることはできる.

 

図1.13  バネ支持模型試験の手順[4]

 

(2)タウトストリップ模型試験(図1.14参照)

 タウトストリップ 模型試験とは,張力を加えた2本のピアノ線で動的剛性を相似させ,これにけた外形を相似させた模型を取り付け,一様気流中あるいは乱流中において対風応答を調べる試験である.本試験で合わすべき無次元パラメーターは(1)のバネ支持模型試験と同じであるが,ピアノ線で弾性をあわせているため,実橋の橋げたの振動モードを近似的に相似させることが可能である.模型の振動数はピアノ線の張力とピアノ線の間隔を変えることによって調整される.慣性パラメーターと構造減衰の合わせ方はバネ支持模型試験の場合と同様である.模型は図1.14に示すように複数のセグメントの外形材から成り,各々のセグメントは振動中にお互いが接触しないよう,適当なすき間を隔てて取り付けられる.

 本試験法は,比較的簡便な方法によって橋げたの振動モードをも近似的に相似させることができ,また小さい模型を用いるため,自然風の乱れ特性(とくに1.11(2)(Z)の乱れのスケールLxu/D)を相似させやすいという点に関してはバネ支持模型試験より優れていると考えられる.このため,渦励振に与える乱流効果の評価やカガスト応答推定の目安値の把握を目的として本試験を行うことがある.

図1.14  タウトストリップ模型試験の概要[4]

 

 タウトリップ模型試験法では振動モードを正弦半波で相似しているため,(例えば二面吊りのマルチケーブル斜張橋のように)実橋の振動モードがこれと大きく異なる場合には特別な注意が必要である.また,ねじれとたわみの振動数比が大きいとき,これを再現することが困難な場合がある.振動数比を大きくするためには模型を支持するピアノ線間隔を広げればよいが,このときピアノ線が外形材の外に出るために張出し部材が必要とされる.このような場合,外に出たピアノ線および張出し部材の空気力学的影響がないことを確かめておく必要がある.振動数比を大きくする他の方法として,橋軸方向のピアノ線の支持間隔を比較的広くとり,外形材のねじれ剛性の寄与を期待する方法もあるが,構造減衰が相当に大きくなるなどの短所がある.

 なお,ピアノ線の代わりに剛性棒を用いて弾性を合わせ,それに外形材を取付けて行う試験方法(剛性棒模型試験)もある.

 

(3)全橋模型試験(図1.15参照)

 橋げたのみならず,塔,ケーブル等(吊橋,斜張橋)をも含めた完全な橋梁の弾性模型試験であり,質量や剛性の分布をはじめ,1.11(1)で述べたすべての相似条件を満足することが要求される.このため,通常は鋼,アルミ,真ちゅうなどで作った剛性棒で2方向の曲げ,ねじれの各剛性を相似させ,外形を木材やプラスチックを成型した部材で整え,剛性棒に取り付けることとしている.この際,外形材はタウトストリップ模型と同様,一定間隔おきに縁を切って剛性には寄与させないという方法をとっている.質量分布は,必要に応じて重錘を付加することにより合わせる.全橋模型試験の場合,模型の構造減衰が所要値よりも大きくなってしまうケースが多いため,とくに剛性棒と外形材の取付け部や沓の構造などに注意して模型を作る必要がある.全橋模型試験は,これを一様気流中,あるいは乱流中で行うことによって実橋の静的変形や対風応答を直接的に,しかも総合的に評価できるという長所を持っているものの,模型設計,製作に高度な技術が必要であり,費用がかかるため,実施例はあまり多くない.

 

図1.15  全橋模型試験の概念図[4]

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1.13.2 塔の風洞試験

 

 橋梁の塔の風洞試験は,多くの場合,風による振動を最も生じやすい架設時独立塔に対して行われる.その方法としては,塔全体を剛体模型化し,それを弾性支持する方法と,塔全体を弾性模型化する方法とがあり,各々の場合,幾何学的相似のほかに次の相似パラメーターが実橋と等しくなければならない.

 

 (1)弾性支持剛体模型の場合

    ds

 (2)弾性模型の場合(バネ支持模型試験,タウトリップ模型試験の場合と同様)

    ds

 ここに,ITf,δsは各々,塔の質量慣性モーメント,固有振動数,構造減衰であり,DTは等の橋軸方向の長さ(他の代表寸法を用いてもよい)である.

 弾性支持剛体模型は,独立した党の片持ちばりとしてのたわみの最低次モードを直線モードで近似するものであり,渦励振などの一般的な性状を知るうえで有益な結果を提供するとされている.この模型製作における相似則として,支持点まわりの質量慣性モーメントITにかかわる無次元量,最低次モードに対応する振動数に関する無次元風速および減衰率を相似させなければならない.

 弾性模型は,対風応答特性を詳細に検証したい場合に採用され,実橋によく似た模型を制作するという目的から,質量あるいは質量慣性分布,剛性分布および構造減衰を相似させ,振動モードを含めたモデルを行う必要がある.また,通常は面外たわみ振動を対象として試験が行われるが,このほかの面内たわみ振動,ねじれ振動を対象とするときには各々の変位方向についても同様な相似則を適用しなければならない.弾性模型における模型化の方法は,全橋模型試験における橋げた部の模型化と同様であり,剛性棒に一定間隔おきに縁を切った外形材を取り付けて行う.質量あるいは質量慣性分布は,あらかじめ模型を軽く作り適当に付加質量を取り付けて調整する.また,構造減衰を調整するために必要に応じて付加減衰装置を取り付ける.

 橋げたの対風応答特性が風の迎角によって大きく変化するのに対して,塔のそれは風の水平偏角に大きく影響される.したがって,塔の風洞試験においては水平偏角を0°〜90°までの範囲で(10°程度の刻みで)変化させ,風速を変化させながら各風速で模型の振動状況を記録し,風速と振動数,振幅,減衰率などの関連を調査する.

 塔の風洞試験を一様気流中で行う方法が意義のあることはいうまでもないが,自然風のもつ平均風速,乱れ強さなどの鉛直分布などの特性(表1.4)が塔のように高さ方向に細長い構造物の空力特性に及ぼす効果を無視することはできない.したがって,試験は1.11(2)で示したような床面祖度による境界層乱流中,あるいは下方に密,上下に粗となるような格子を用いた格子乱流中で行うことが望ましい.なお,塔の風洞試験方法についても静的空気力測定試験,バネ支持模型試験と同様,「本州四国連絡橋風洞試験要領(1980)・同解説」に詳細な記述がある.

 独立塔の状態から架設ステップが進んでけたの一部が取り付けられ,さらにケーブルが張られたようなケースを対象として試験を行う場合には,これらの幾何学的形状および構造特性を全て相似させて試験を行う必要がある.したがって,この試験では橋げたの風洞試験の項で述べた全橋模型試験と同様の模型設計を行って試験を行うことになる.

 なお,塔規模が非常に大きい場合,あるいは一本柱構造の塔の場合には,全橋完成時にあっても風による振動が塔に発生する可能性がまれにある.このような完成系塔の空力弾性試験を(全橋模型試験ではなく)比較的簡便に行う方法として,架設時独立塔模型(弾性模型)を用い,これに塔以外の部分の寄与を代表するバネや付加質量を取り付けて試験を行う方法などいくつかのモデルが提案されている.このとき,バネ定数や付加質量の大きさなどは,モデルに対して固有値計算を繰り返し,振動モード形状や振動モードを考慮した質量などが完成系塔のそれらと十分な精度で一致するように定めることになる.こので,目標値としての完成系塔の(塔卓越)モードは,全橋固有値解析の結果としてかなりの高次モードとして出ることが多い.その結果,解析精度が低下している可能性があるので,この点を十分に考慮したうえでモデル化の検討を行う必要がある.

 

[参考文献]

1 本州四国連絡橋公団,尾道・今治ルート耐風設計基準・同解説,平成6年1月

2 山田均,耐風工学アプローチ,建設図書,1995

3 本州四国連絡橋公団,本州四国連絡橋風洞試験要領(1980)・同解説,昭和

    55年6月

4 (社)日本道路協会,道路橋耐風設計便覧,平成3年7月

 

 

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